2008年10月14日火曜日

坂野研究室を訪問しました

2008年10月11日(土)の午後1時より、東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻の坂野研究室を訪問しました。立花隆さんと、東京大学立花ゼミの学生2名で、坂野仁教授にインタビューをしてきました。今回、坂野教授のところを訪問したのは、「ワトソンとスタイツが語る未来の生命科学」のプログラム最後のディスカッションで、立花さんと坂野教授の二人が進行役を務めることになっているからです。その打ち合わせを兼ねて、坂野教授のこれまでのキャリアから、現在の研究室での成果、そして今後の神経科学の発展まで、さまざまなことをお話していただきました。

(嗅索の位置と役割について、PC画面で説明していただいている様子)

坂野仁先生は、スイスのバーゼル研究所で利根川進氏らと免疫学分野で研究をしてから、UCLAバークレー校で独立し、自らの研究室を構えます。その後、研究室を東京大学へ移すとともに、研究分野を神経科学に変更し、今に至っています。どうして、思い切って研究分野を変えたのですか、という立花さんの質問について、坂野教授は、自分がかけたハシゴを下ろすのは大変だったが、自分がこちらだと思うほうに進んで行ったらそうなった、と言いました。

(次々に質問を投げかける立花さんと質問に答える坂野教授)

坂野研究室では、嗅覚を研究しています。手短に説明すると、匂いというものは、はじめに化学物質が、鼻の嗅上皮にある嗅覚受容体に結合します。そうすると、嗅上皮からのびた神経線維が、嗅索にある糸球体というところに電気パルスを伝えます。匂いの情報は、嗅索から最終的に嗅球に伝えられ、匂いが匂いとして知覚されます。嗅覚に関する感覚系(嗅覚系)は、記憶や情動との結びつきが強いことが、古くから指摘されている、興味深い研究対象です。


(天敵のキツネの匂いを嗅いでもおびえない遺伝子改変マウスをつくった小早川さん)

坂野研究室の小早川さんに、最新の研究成果をわかりやすく教えていただきました。小早川さんは、先に述べた嗅索の一部の神経細胞が欠けた、遺伝子改変マウスを作成しました。小早川さんは、そのマウスをつかって行動試験(学習能力や運動能力などの性質を調べる試験)をしていて、あるとき、そのマウスが匂いに反応しないらしいことに気がつきました。匂いは嗅げているはずなのに、それがどんな匂いなのか判断できない。小早川さんは、マウスの天敵、キツネの匂い成分をそのマウスに嗅がせたところ、マウスが通常示すような、おびえ反応が全く起きないことを見つけ、昨年Natureに論文を発表しました。

などなど、神経科学の世界で、急速にわかってきたお話を聞くことができました。今回のインタビューについては、見聞伝のサイトに記事として掲載する予定です。

当日のディスカッションをお楽しみに。

〔文責 Y.I.〕

開催まであと8

※この予告ブログは、東京大学立花ゼミ・見聞伝の学生が企画・運営しています。

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